2002年 夏合宿 回想録

2002年8月26日〜28日

第1日(8月26日)

☆ヒスイの里へ
去年に続いて2002年夏も地圏探は夏合宿を実施した。しかも、今年は公共交通機関を 使用せず、自動車3台に分乗して行く事になったので行動範囲はグッと広まったのである。そういう わけで、去年の軽井沢の3倍以上は遠い新潟県糸魚川市・青海町周辺が今年の夏合宿の舞台となった。
さて当日の朝、熊谷駅に集合した地圏探部員一同だったがあろうことか3台の車のうち運転手1名が 時間になっても現われない・・・。どうしたことかと連絡を取るとどうやら寝坊をしてしまったらしい。 結局、車2台でも参加者全員を何とか詰め込める(もちろん、道交法に違反しない範囲で)という ことなので、彼には後で合流してもらうことにして2台だけで糸魚川へ向けて出発となった。
平日だったこともあり高速道路は空いていて、順調に先へと進めた。途中、上里SAと 東部湯ノ丸SAで休憩することになっていたが、東部湯ノ丸では一緒に走っていたうちの 1台がSAに気づかずそのままスルーしてしまい、とうとう地圏探の3台の車はバラバラに なってしまった・・・。(これが自動車分乗移動の難しいところである)。
結局、次の妙高SAでバラバラになった3台は無事に感動の(?)再会を果たし、そのまま 昼食タイムになった。


☆天険の地・親不知海岸
午後3時、まずは最初の目的地である親不知海岸に到着した。親不知は 北アルプスが海に突き出している場所で、海岸がもの凄い崖になっている。国道や鉄道が 開通する前のその昔は、日本有数の旅の難所として恐れられていたのである。
今ではその険しい景色が景勝地となっていて、車から降りると素晴らしく真っ青な海が 目に飛び込んできた。車をとめた駐車場は高さ100m近くはあろうかという崖の上なので、 眺めは抜群だった。
折角なので、海岸まで降りてみようということになり、部員全員で海岸へと続く階段を降り始めた。 急な階段を降り続けること約5分、ようやく海岸へ辿りついた。しかし、海岸へ降りてみると 思っていた以上に波が高く、一歩間違えようものなら全身波しぶきを浴びてしまうような状態であった。
15分くらい高波迫る親不知海岸で過ごしてから、もと来た階段を戻り始めた。下りは良かったものの、 帰りは何せ高さ100m近い崖を一気に登るので、ひぇ〜疲れる・・・。
登り途中、歩道の右側に不気味なトンネルがポッカリと口を開けていたが、これはどうやら 旧北陸本線のトンネルらしい。トンネルの中は暗くて恐かったが、冷蔵庫のように涼しくて 帰りはこのトンネルの中で休憩してしまった。
親不知全景と海岸の荒波の様子


☆ヒスイ探し
親不知周辺の海岸には、宝石の一種である「ヒスイ」の原石が転がっている ことがある。これは、姫川(小滝川)や青海川のヒスイ峡からヒスイの欠片が流れ出したもので、 今回の合宿ではヒスイ採取をすることも目的の一つに含まれていた。
本来、さっきの海岸でヒスイ探しをしようと考えていたが、あまりの波の高さでヒスイを探せるような 情況ではなく、ヒスイ探しは道の駅「ピアパーク親不知」の海岸で行うことになった。 ここなら波が高くても浜が広いのでヒスイを探すのに問題はない。
地圏探部員は各々の場所に散らばりヒスイ探しを1時間半くらい行った。しかし、ヒスイと 普通の石を見分けることは物凄く大変なことだと私はこのとき思い知った(他の部員もほとんどが 同じことを感じた)。結局、「それっぽい」と思われる石をいくつか拾い集めて、明日訪問する予定のフォッサマグナ ミュージアムの学芸員さんに簡単な鑑定を依頼することにした。
午後6時、そろそろ日も暮れるということで今日の活動は終わりにして今夜の宿へ向かった。 その晩宿泊したのは糸魚川市の美山公園の一角にある「パークイン美山」という宿だった。

☆天体観測一晩目
地圏探合宿といえば、夜には飲んで寝るのではなく皆で天体観測を行うことも 定着した恒例行事となりつつあった。今年の合宿でも夕食を済ませてから天体観測を行った。 とは言え、今夜は雲も多くあまり空の状態もよくないので、山の方まで星見に出かけるのはやめて、 とりあえず美山公園内の運動場で天体観測を行うことになった。
今回の天体観測は、もちろん「天体を見る」という目的もあったが、新入生に天体望遠鏡の利用法や 天体写真の撮影法を指導する目的も大きかった。
そんなこんやで約1時間程観測会を続けていたが、やがて空が雲に覆い尽くされてしまった。 こうなればもう雑談タイムに突入。私は後輩に得意技の座禅ジャンプ(俗に空中浮遊の真似事とも言う) を披露、好評を得たのだか変わり者扱いされたのだかは未だに謎である(笑)
こうして、地圏探合宿の初日はめでたく楽しく終わっていった。




第2日(8月27日)

☆フォッサマグナミュージアム見学
合宿2日目、午前中は宿と目と鼻の先にある「フォッサマグナミュージアム」を見学に行った。 フォッサマグナミュージアムはその名の通り、フォッサマグナについての解説や展示をしてある 博物館だが、実際に見学してみると、むしろ糸魚川名産のヒスイにもかなり重点を置いている 博物館である(だけど、深く考えるとフォッサマグナのような複雑な地質構造があってこそのヒスイ であるとも言えるかも知れない)。その他、世界の宝石や化石についても展示もある。
フォッサマグナミュージアムは展示内容も多い博物館なので、かなり見学に時間がかかる。 地圏探一同も午前9時の開館と同時に入館して、見学し終わったのは2時間後の午前11のことであった。

☆班別行動へ
フォッサマグナミュージアム見学後、地圏探合宿2日目の午後は班別行動になった。 何故、班別行動になったのかは長くなるので 割愛するが、事前に決めておいた通りに「気象観測班」「ヒスイ見学・採取班」「化石採取班」の三班に 分かれて行動した。私はヒスイ班所属だったので、日記にはヒスイ班の1日を記すことにする。
ヒスイ班はまず、これから山深い場所へ行くことになるので今のうちに昼の弁当を買ってしまおうという ことになり、糸魚川市内で適当な店を探した。そしてすぐに、サティー糸魚川店を発見!
ところが、このサティー糸魚川店、8月31日をもって閉店ということで、現在閉店セールの真っ最中 だったのだ。パンや飲み物などは軒並み2〜3割引きと言う状態になっていて、よそ者の癖をしてかなり の得をしてしまった・・・。

☆ヒスイ峡
糸魚川市外から姫川を上流へ行き、さらに小滝川沿いの狭い道を奥へと進むと、 本日最大の目的地であるヒスイ峡に到着である。ヒスイ峡を流れる水は冷たく澄んでいて、 水が流れるザ〜という音が実に涼しげで心地よい。そして、とにかく凄いのが 目の前にそびえ立つ明星山という山だ。ヒスイ峡から明星山の山頂までは垂直に近いような 崖で、その高さは500m以上はありそうだ。こんな迫力のある山は今までに見たことが無かった。 尚、明星山は石灰岩の塊でできているらしい。
とりあえず、ヒスイ峡のあずま屋でヒスイ班の5人は昼食をとった。
さて、昼食を終えてからいよいよ巨大なヒスイの近くまで行ってみることになった。ヒスイ峡には 直径5mを超えるようなヒスイの原石がゴロゴロ転がっているのだ。ヒスイは緑色やラベンダー色 のものが多いと誤解されがちだが、実際は白色が中心。下の写真を見ても、ヒスイが真っ白で あることはお分かりいただけるだろう。
それにしても、ヒスイ峡のヒスイの大きさには大感動。ヒスイの上に乗ったりして記念写真を 撮ったりもした。
ところで、もちろんヒスイ峡でのヒスイ採取は禁止である。ヒスイ峡は特別天然記念物にも 指定されており、あそこでハンマーを持ち出そうものなら即パトカーがお迎えにやって来る ことは間違いない(盗掘防止の監視カメラも設置されているそうです)。
ヒスイ峡のヒスイ(中央にある2つの白い石がヒスイの塊)と、険しくそびえ立つ明星山。


☆姫川でのヒスイ採取
さて、ヒスイ峡でヒスイを見た後は、いよいよヒスイ採取に挑戦である。 一旦「高浪の池」という池を経由し休憩してから、姫川と小滝川の合流点付近の河原へ行って ヒスイ採取を行った。
と言っても、実際に簡単にヒスイを見つけられたかと言うと親不知海岸と同様に全然そんなことは無い。 とにかく普通の石とヒスイの見分けがつかないのだ(ヒスイは色では見分けられない。これは 合宿が終わってから知ったことだが、ヒスイを見分ける決め手は「味の素」状の結晶構造である。 これを瞬時に見分けるには慣れた目が必要なのである)。
しかし、ヒスイを見つけることは出来なくても地元の荒川ではとても見つからないような 緑色の鉱物(おそらく、何らかのクロムを含む鉱物と思われる)などは結構拾うことが出来て、 石のサンプル集めが好きな私としては満足した。

☆フォッサマグナパーク
2時間ほど姫川の河原で過ごした後、折角なので宿に帰る途中にある フォッサマグナパークに寄って行くことになった。ここは糸魚川静岡構造線=北米プレートと ユーラシアプレートの境界を見学できる公園である。
駐車場から10分くらい歩いていくと、その境界の現場にたどりついた。境界に立つと、右足は 北米プレート・左足はユーラシアプレートという何とも妙な気分になる体験が出来るのだ。
フォッサマグナパークを見学しているうちにすっかり日も陰ってしまったので、急ぎ足で 宿へと戻った。
フォッサマグナパーク内にある北米・ユーラシアプレートの境界


☆夜の班別報告会
夕食と風呂を済ませ、午後9時からは各班別に今日行ってきた活動の報告会を行った。
まず、気象観測班は糸魚川市内で温度計を取り付けた自動車を走らせ、移動気象観測を行った とのこと。結果、人口わずか3万人程度の街であってもヒートアイランド現象が見られるの ではなかという観測結果が得られた。
化石採取班は青海町内の石灰岩地帯で化石採取を行ったとのこと。そこで採れた化石は主に サンゴ類だったらしいが、石灰岩に含まれる化石はパッと見ただけでは非常に目立ちにくく、 石灰岩から化石を見つけるのは結構難しかったようだ。
そして、ヒスイ班も今日一日の活動を他の班に伝え、三班の発表会は終わった。(ちなみに、 日記中では特に触れていないが、実際はヒスイ班も標高による気温差を実際に観測するという 目的で軽い気象観測を行いました。結果、山の麓と高浪池のある標高500mでは気温が3℃程度 違うという結果が得られました。)

☆そして今夜も天体観測
発表会が終了したのは既に午後11時も近かったが、それで2日目の活動が終わった 訳ではなかった。外へ出てみると、昨日に比べて空が澄み、非常に天体観測に適した状態になって いたので、寝ることよりも天体観測のリベンジに挑戦することの方が優先されたのだ。しかも、 折角なので車で少し山のほうへ行ってみようと言うことになり、深夜の遠征に出発した。
車を山のほうへ走らせること30分、日中にヒスイ班がヒスイ採取をした辺りまで行くと街頭も 少なくなって大夫暗くなったので車を停めて天体観測会をPART2が開始された。
空の情況も月が出ていることを除いては最高で、天体写真の撮影に挑戦する部員も居た。 私はレジャーシートに横になり、久しぶりに星座探しなんぞものをやってみたりもした。 そうこうしているうちに時間がどんどん過ぎ、午前1時くらいになってしまった。その頃になると 流石にお疲れの人も出てきたようだし、翌日のことも考えて観測会を終了することになった。 それにしても、この日は出来ることなら一晩中観測会を続けても良いほどの好条件の空であった。
コンビニ経由で宿に帰ったのはもう午前2時。それから2日目朝から途中参加した部員が 差し入れてくれた寿司(感謝!)を皆で食べて就寝した。あぁ、長い1日でした。




第3日(8月28日)

☆ドキドキ鑑定!
地圏探合宿最終日は帰路途中にある野尻湖ナウマンゾウ博物館を見学して熊谷に帰ろうという予定 だった。しかし、これまでに採ってきた石がヒスイかどうか鑑定してもらいたいということで、 時間に余裕のある人はもう一度フォッサマグナミュージアムに寄ってから糸魚川を後にしようと いうことになった。そして帰りを急いでいた多くの地圏探部員は宿を出て野尻湖へ向かった。 私はヒスイ班だったこともあってもちろんフォッサマグナミュージアム経由の車に乗り込んだ。
さて、ミュージアムに到着して学芸員さんを呼んでもらっていよいよ鑑定が開始された。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、と、こ、ろ、が、4人で総計50個以上持っていた 石全てが「ヒスイではない」との鑑定。実に残念だったが、プロが海岸を1日探して2〜3個 拾えれば儲けものという話を聞いては、ヒスイ採取初体験の私たちにとってこれは当然たる 結果であったと言えると思う。
その代わり、ヒスイの正しい見分け方やヒスイについてのいろいろな知識、曹長石とヒスイが 化学組成的には近いことなど、学芸員の方からいろいろな話を伺うことが出来た。 これは、以後のヒスイ採取(実は、合宿後10月には再度個人的に糸魚川を訪問している)に とってとても役立つ話であった。ちなみに、これまでの日記に「〜と思われる石を拾った」 などという記述があったが、それらも全てこの時に教えていただいたことなのである。 拾った時に既にそんな判断がついていた訳ではないのだ。

☆ナウマンゾウ博物館見学
鑑定を済ませ、フォッサマグナミュージアム経由班もナウマンゾウ博物館へと急いだ。ナウマンゾウ博物館は 長野県の野尻湖畔にある博物館で、野尻湖班で大量のナウマンゾウ化石が発掘されたことに伴って建設 された博物館である。
直行でナウマンゾウ博物館へ向かった部員たちに遅れること1時間、私たちも博物館に到着し、昼食を済ませてから 中をゆっくりと見学した。それにしても、展示されているナウマンゾウの大きさには圧倒された。
博物館を見学し終えた後は、もう熊谷を目指して一途進むのみ。
午後6時、熊谷駅に無事到着し、今年の夏合宿も無事に終了を迎えることが出来ました。

[完]


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